遺伝子から見た日本人のルーツ
2017/01/28
最近の遺伝子の研究によって、日本人のルーツが解明されつつあります。
ここでは遺伝子から見るとどのように考えられるかについて簡単に解説いたします。
人類の起源はアフリカにあることが分かっています。
白色人種（コーカソイド）と黄色人種（モンゴロイド）の共通の先祖がエジプトを出て、白色人種は北のヨーロッパへ、黄色人種は東のユーラシア大陸へ拡散して行きます。
日本人の先祖が東の端まで来たとき、日本は北海道と九州が大陸とつながっており、日本海は大きな湖でした。
日本人の先祖はその両方のルートから入ってきたと考えられています。
そのことを含めて以下遺伝子で見てみましょう。
まず遺伝子について説明します。
ルーツを解明するための糸口となる遺伝子には、
１．Ｙ染色体
２．ミトコンドリアＤＮＡ
３．Ｇｍ（ガンマグロブミンマーカ）遺伝子
があり、その特徴と現在解明されている事柄を挙げると次のようになります。
１．Ｙ染色体
細胞の核にある染色体にはＸ染色体とＹ染色体があり、
ＸとＸの時は女性に、ＸとＹの時は男性になります。
Ｙ染色体は父親から息子へ引き継がれ、
母親の遺伝子からは影響を受けないことが分かっています。
従って、この染色体をたどると、男系の先祖を解明することができます。
現在分かっている周辺国とのＹ染色体の遺伝子関係は次のようになります。
（１）中国と韓国はＯタイプ。
（２）日本はＤとＯタイプで、
Ｄの比率は、
アイヌの人が約８８％、
日本本土の人が４２～５６％（中国大陸に近い九州が最も少ない）、
沖縄の人が約５６％
Ｄタイプは比較的古いタイプの遺伝子で縄文人の持つ遺伝子と言われています。
Ｏタイプは比較的新しいタイプの遺伝子で弥生人の持つ遺伝子と言われています。
２．ミトコンドリアＤＮＡ
細胞の核の外にあるミトコンドリアが持つ遺伝情報で、
Y染色体に比べて５から１０倍変化しやすいことが分かっています。
ミトコンドリアＤＮＡは母親から娘へと引き継がれ、
父親の遺伝子からは影響を受けないことが分かっています。
従って、この遺伝子をたどると、女系の先祖を解明することができます。
現在分かっている周辺国とのミトコンドリアＤＮＡの遺伝子関係は次のようになります。
（１）九州人と韓国人は非常に似通っています。
（２）日本本土では関東より西と、東北より東でかなり異なっています。
３．Ｇｍ（ガンマグロブミンマーカ）遺伝子
この遺伝子は血液中の血漿の中にある遺伝情報の１つです。
血液中にはこの遺伝子以外にも数多くの遺伝情報があることが分かっていますが、
この遺伝子が一番人種の違いを反映していると言われています。
現在分かっている周辺国との遺伝子関係は次のようになります。
（１）中国、韓国と日本は少し違っています。
（２）日本は北（アイヌ）から南（沖縄）までほぼ均一です。
以上の遺伝子情報から分かることは次の通りです。
１．Ｙ染色体遺伝子の分布から分かること。
比較的古いタイプのＤ染色体が日本列島の両端のアイヌと沖縄に多く、
九州のような大陸に近い所ほど少なくなっていることから、
最初日本に到着したＤタイプの遺伝子を持つ縄文人が住み着き、
その後比較的新しいＯタイプの遺伝子を持つ弥生人が、
中国大陸から九州に渡来人として渡ってきたことを示しています。
２．ミトコンドリアＤＮＡの分布から分かること。
韓国と九州の女性が似通っていることは、最初に日本列島に入ってきた人類が朝鮮半島を経由して九州に入ってきたこと。
女性は同じ人種であること。
陸続きだった北海道と九州の二つの別のルートを経由したため、
変わりやすいミトコンドリアＤＮＡが変化して、
関東より西と、東北より東で違いが生じたこと。
３．Ｇｍ遺伝子の分布から分かること。
日本人は、中国人と韓国人とは男の遺伝子の違いにより、
多少の違いがあること。
日本人は北から南まで単一民族で構成されていること。
結論として、大陸から北海道と九州の２つのルートから入った縄文人（古モンゴロイド）が日本全体に住み着き、
かなり遅れて弥生人（新モンゴロイド）が大陸から九州に渡来し、徐々に勢力を広げているというのが現状のようです。
また大陸に縄文系のＤ系統がいないことから、
大陸では弥生系のＯ系統にすべて滅ぼされたということが分かります。
蛇足かも知れませんが、
日本人のルーツを考えるときに３つの遺伝情報、
すなわちＧｍ遺伝子、Ｙ染色体、ミトコンドリアＤＮＡの中の１つだけで論じている人がいますが、
３つの遺伝情報を総合的に検討しなければいけません。
このような記事を見るとき３つの遺伝情報で論じられているかを判断の基準としてください。
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