親が子供に聞かせてやりたい話 その2
2016/04/05
本稿は親や教師が学生に聞かせてやりたい話シリーズのその2です。
この話も真偽は定かではありませんが、中学の頃、父から聞いて深い感銘を受けいまだに心に強く残っている話の1つです。
徳川3代将軍家光は諸国に溢れた浪人達の気持ちを引き締めるため、しばしば城内で武術大会を開きました。
ある大会のとき余興として中国大陸から贈られた大きな虎が披露されました。
初めて見るその大きさにみな驚き、
「うわさには聞いていたが、大陸には本当にこんな猫の化け物のような動物がいたのか」
と言い合いました。
虎は頑丈な檻の中にいますが、群衆の前にいきなり引き出されたために驚き、
今にも檻を破って出て来そうな勢いで荒れ狂っています。
そこで将軍は、
「そち達の中で、この荒れ狂う虎を剣で静かにさせられる者はいないか?」
と聞きました。
「人間が相手なら自信があるが、猛獣が相手では話が違う」
と思い、誰も出て来ません。
そこで将軍は、そばにいた剣の指南役に手本を見せるように指示しました。
指南役も立場上拒否できず、仕方なく立ち上がり、檻の前で剣を構えました。
1分2分と時間が経ちました。
指南役もぶざまに引き下がるわけにはいかず、必死で立ち向かいました。
やがて虎は指南役の気概に負け、おとなしくなりました。
「さすが指南役。剣の迫力が猛獣を委縮させたぞ」
といって拍手喝さいが沸き起こりました。
話はここで終わりませんでした。
隣で座っていた天海和尚が立ち上がり。
「今度は私がやってみよう」
と言い出したのです。
みんな驚きました。
天海和尚は将軍の学問の指南役で剣の指南役ではありません。
しかも初代将軍家康から仕えた人ですからかなり高齢だったはずです。
和尚は数珠を手にして檻の前に立ちました。
虎は剣の指南役が去ったことで前にも増して荒れ狂っています。
和尚は静かにお経を唱え始めました。
しばらくすると虎は次第におとなしくなり、座り込んでしまいます。
十分おとなしくなったところで、和尚は檻のカギを開けるように側近に命じました。
訝る側近をしり目に、なんと和尚はその檻の中に入ってしまったのです。
みんな驚き、喰われてしまうのではないかと心配します。
檻の中で和尚は再びお経を唱え始めました。
群衆は奇跡を目の当たりにしました。
あれほど荒れ狂っていた虎がまるで猫になったように和尚の袂でじゃれ始めたのです。
人々は口々に言い合いました。
「なるほど虎を鎮めた指南役の剣の迫力はすごかった。
しかし天海和尚はもっとすごかった。
こころを鍛えると、こんな猛獣までも鎮めることができる程、
すごい力を手にすることが出来るのか。」
人々はこの時、「こころ」の持つ無限の力を思い知らされたのでした。
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